歴史調査(神奈川県の歴史 月見野遺跡群 発掘50周年講演会)

歴史調査(月見野遺跡群 発掘50周年講演会)
1月20日(日)大和市文化創造拠点シリウス サブホールで行われた『月見野遺跡群 発掘調査から50年』という講座・講演・座談会があり、午後の部から聴講してきました。(講演の解説書(レジメ)1000円を購入)

月見野遺跡群発掘調査から50年

 日本旧石器時代研究史の大きな節目となった大和市つきみ野所在の「月見野遺跡群」の調査は、昭和43(1968) 年9 月と昭和44(1969) 年4 月の2 回、明治大学考古学研究室によって行われ、ちょうど50 年を迎えます。月見野遺跡群では、従来の「点」の調査とは違う「面」の調査により、かつてない旧石器時代のムラの様子があきらかになりました。
 今回の講座では、50 年前に月見野遺跡群の調査に携わった研究者の方々などから、月見野遺跡群の調査によって得られた学問的な衝撃の内容や、その後の旧石器時代研究に与えた影響の大きさについてお話しいただきます。また、座談会では、いままで語られる機会の少なかった発掘調査当時の思い出やエピソードなどをご披露いただきます。

10:00 ~ 10:05 開会 会長挨拶
10:05 ~ 10:15 趣旨説明
10:15 ~ 11:05 講座1「月見野遺跡群とその後の旧石器時代研究」
        鈴木次郎氏((公財)かながわ考古学財団)
11:05 ~ 11:55 講座2「月見野遺跡群発掘調査の時代とその背景」
        村澤正弘氏((公財)かながわ考古学財団)、須田英一氏(法政大学)
11:55 ~ 13:00 休憩
13:00 ~ 14:00 講演「月見野遺跡群の発掘調査とその意義」
        安蒜政雄氏(明治大学名誉教授)
14:00 ~ 14:50 講座3「月見野遺跡群の発掘調査と旧石器時代研究のいま」
        諏訪間順氏(小田原市)
14:50 ~ 15:00 休憩
15:00 ~ 15:55 公開座談会「月見野遺跡群の発掘調査 -50 年前の現像」
        安蒜政雄氏、鈴木次郎氏、金子豊貴男氏(月見野遺跡群調査従事者)
        司会:砂田佳弘氏((公財)かながわ考古学財団)、村澤正弘氏、須田英一氏、諏訪間順氏
15:55 ~ 16:00 副会長挨拶 閉会

私は、考古学の初心者(昨年6月から神奈川の史跡めぐり、及びブログを始め、約半年です。)ですので、そのレベルで講演内容を整理します。

講演「月見野遺跡群の発掘調査とその意義」
講師の安蒜政雄氏(明治大学名誉教授)は、当時学部4年で、遺跡発掘の陣頭指揮をした人だそうです。
発掘調査の経緯
そもそも遺跡発掘は、岡本勇氏(明治大学)らの相模野台地の遺跡分布調査(目黒川、引地川・目久尻川の関東ローム層の露頭調査が主)によって河川沿いの遺跡分布が明らかになり、これに触発された明治大学考古学専攻生で組織された『相模考古学研究会』なる組織が、相模野台地の遺跡40遺跡を確認した。その後目黒川流域の土地区画整理事業が始まっており、その露頭等から目黒川に18遺跡を確認し、遺跡の破壊状況から、明治大学考古学研究室に相談した。明治大学戸沢充則助教授のもと月見野遺跡群の発掘調査が始まった。依頼主(東急)

要するに当時は、今もそうかもしれないが、発掘の主体は学生で、すべて手弁当、手作業であったようだ。
「月見野遺跡群の発掘調査とその意義」は、旧石器時代の研究史が『月見野・野川以前と以後』に大別されるようになるという、ことらしい。
大規模な重層遺跡群を日本で初めて発掘調査することにより、学会に3つの衝撃を与えた。
①発掘の方法が確立した。
②発掘の成果が広範囲・大規模となり(野川10層、月見野7遺跡6層)
③遺跡の構成・遺跡間の関連研究、編年研究ができるようになった。

そして、『月見野・野川以前と以後』は、以後石器研究と遺跡研究に2極化され、加速していく。

石器研究の確定
野川遺跡は10層の重層遺跡(岩宿は3層)・・・・・1970年代の中ごろには、立川ローム層の下底部出土を最古とする石器群の層位的な出土例に裏付けられた、武蔵野台地の編年が完成。
月見野遺跡群は、4遺跡が1、5遺跡が2、1遺跡が3の重層であるが、全10遺跡を1つの遺跡と考えると重層度は6に匹敵する。武蔵野台地に倍する厚さの立川ローム層に到達し、1980年代の末には、相模野編年が確定する。

遺跡研究の確立
それまでは、石器がある遺跡のどの層がら出土したかを記録するのみ。
平面的位置不、深度不明、石核、石片、炭素片は採取されない。
千葉丸山遺跡で、石器群の全数位置・番号記録された例があるが、目的、活用方法が定まらず、途中で中断してしまうことが多かった。
石器は、『小区域に群在』し、集群と呼ばれていたが、月見野・野川以後は、集群をブロックと改名し、遺跡と遺跡群の成り立ちをか解明するという目的が掲げられ、出土石器群の全点位置記録・全点番号登録と固体別資料分類を基軸とする、遺跡研究の今日的な手法の1つが確立した。(今では石器だけでなく石核、石片、炭素片が採取されるがいつからそうなったかは?月見野遺跡群では石器のみというようなニュアンスの発言もあったような気がする??)

新たな『月見野・野川以前と以後』 
月見野・野川遺跡の調査と研究は、いまなお継続中であり、半世紀にも及ぶ壮大な仕事が実を結び、活用されたとき、旧石器時代研究の歩みに、画期としての第2の『月見野・野川以前と以後』が誕生するだろう。

講座3「月見野遺跡群の発掘調査と旧石器時代研究のいま」
        諏訪間順氏(小田原市)
諏訪間順氏は、小田原城天守閣館長で、鈴木次郎氏(安蒜氏の2学年下)の後輩にあたるようで、吉岡遺跡の発掘調査、黒曜石の研究、相模野編年の確立など、神奈川では考古学の権威の1人であるようだ。
冒頭、チラーと『4万年以前の石器は、現在見つかっていない。』とのべ、やはり、旧石器時代研究者にとって、いつまでたっても忸怩たる思いがあるようだ。

月見野遺跡群発掘調査の以後の編年研究について、
鈴木次郎氏は1976年相模野編年、1978年南関東地方の統一的な旧石器編年案を提出。
寺尾遺跡の発掘等多数の神奈川県内の遺跡発掘の成果により、諏訪間順氏は、旧石器時代10層、縄文草創期2層、合計12層の相模野編年を発表した。

注)これらの成果は、下記に公開されている。

https://sitereports.nabunken.go.jp/ja/18869
https://sitereports.nabunken.go.jp/ja/event/266
ここには、著作権について下記のように書いてある。
【著作権およびリンクについて】
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相模野台地の層位と石材環境

以下少し専門的になるので、気が付いた点のみ整理します。
相模野台地の層位の特徴
関東ローム層が6~8mあり、日本列島の中で最も層位的出土例に恵まれている。
(厚いので分解能が高い、相模野台地、多摩丘陵、武蔵野台地、大宮台地、上総台地と富士山から遠くなるほどローム層はうすくなる。)
AT層(姶良火山灰)は2万8千年前で、日本全国の層序と比較できる。
年代測定方法の進化(放射性炭素14C、水月湖の年縞、グリーンランドの氷床コアの酸素同位体比変動)

石材環境
チャート(多摩川)、硬質凝灰岩(相模川、丹沢)、黒曜石(箱根畑宿、伊豆
柏峠、和田峠、神津島恩馳島)、ガラス質黒色安山岩(箱根)

相模野台地における石器群の変遷と年代

段階Ⅰ(L6層~B5層)較正年代38000~36000年前
吉岡遺跡B5層石器群 ナイフ状石器、楔形石器、彫器

段階Ⅱ(L5上部~B4上面)較正年代36000~34000年前
台形様石器、一側縁加工ナイフ形石器、局部磨製石斧
以下途中まで省略する

段階ⅩⅡ石器群(漸移層~富士黒土層)15000~13000年
隆起線文土器と共伴する段階である。???

参考
シリウスの5階に月見野遺跡群上野(かみの)遺跡第1・2地点出土品の展示室があり、帰りに寄ってみた。その資料(一枚のビラ資料)の一部を紹介する。なお、美しい隆起線文土器も展示してあった。

上野(かみの)遺跡第1地点では、昭和54年(1979年)の発掘調査中に、関東ローム層最上部のソフトローム層から、約1万3千年前のものと考えられる日本最古の土器片が出土しました。それまで、日本最古の土器は、約1万年~1万2千年前の隆起線文土器であると考えられていましたが、第1地点では隆起線文土器が出土した層より、20~30cm下の古い地層から土器片が出土しました。同年に長崎県佐世保市の泉福寺洞穴から発見された豆粒文土器とともに、隆起線文土器を越える日本最古の土器であるとして、新聞の一で面大きく報道されました。(1985,5,22毎日新聞)

感想
座談会では、考古学発掘の今と昔の違いが話題となり、興味深かった。手作業で掘るから、掘った土を盛ったところを掘るには、土どかすのにさらに大変だったとか、研究室の誰と誰が結婚したとか50年前のいろいろな話が出てきて面白かった。
追記
1000円で購入したレジメには、資料として発掘に携わった明治大学考古学研究室のメンバーが学年ごとに氏名が載っている。
2/2(土)のブラタモリの一乗の谷の番組に出演された小野正敏氏(希望ヶ丘高校出身、一乗の谷を発掘、復元し、後に国立民俗博物館副館長)が、3年生の欄にその名前が出ている。(知人に高校の同級生がいるので一応、追記しておく。)



 

 







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